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[コメント] 新仁義なき戦い(1974/日)

演出に特化した作品はリアルタイムで映画館で観て初めて本当の面白さが分かるのでしょうね。劇場で観たかった。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 新シリーズとなり、続き物ではなく、日本各地の暴力団組織の話へと移っていくのだが、新シリーズ最初の一本目は5部作と同じく広島の山守組を舞台に。しかもシリーズが始まる5年前にさかのぼっての話となる。これによって、主人公も広能から三好という男に変えられたが、組長の山守は同一人物として金子信雄が続投という変則的な話になってる。むしろ『仁義なき戦い』の外伝として観るべきだろう。

 話自体は1作目『仁義なき戦い』によく似た構造を取っているが、これまで二年かけてみっちりと作り上げてきただけあって、キャラがそれぞれ脂の乗った演技を見せているし、残酷な演出も映えている。その意味では、なるほどこのシリーズをすぐに切るには勿体ない話だったというのはよく分かる。

 ただ、本作の場合、致命的にストーリーが弱すぎるという問題がある。元より1作目の一エピソード(松方弘樹のやつね)を焼き直しただけで、ショートエピソードを無理矢理長引かせただけのため、非常に話が間延びして見えてしまう。しかもシリーズを観た人だったら、物語のオチも分かってしまってるので、そこで全然浮かれる部分が感じられないのが致命的。

 その分残酷描写や色気のシーンをかなり増した作りになっているのだが、そのパートがどうしても浮いて見えるのは仕方ないところか。

 キャラの描写はなかなか良し。今回菅原文太は広能ではないため、あれほどストイックでもなく、むしろ平気で暴力を振るう乱暴者に仕上げられている。差別化はしっかり図られていたし、何よりシリーズを通して同一キャラを演じた金子信雄はますますワルぶりが堂に入っている。自分には何にも出来ないとか嘆きつつ、あらゆる手練手管を使って有能な人間をコマの如く動かし、最後に実利をがっぽりいただいてしまう。極悪非道なことをやればやるほどかえって格好良く見えてしまう…というか、観てるこっちがにやけてしまうようなキャラに仕上げられ、確実にこのキャラが裏の主人公を張ることでこのシリーズは面白かったのだ。と言うことを再確認させてもらった。

(評価:★3)

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