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[コメント] エンダーのゲーム(2013/米)

私が観たかったのはこんな無難な物語じゃなかった。無難故に点数は低くならないけど。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 この手の固定ファンの多いSF作品は、作るのが難しいだけじゃなくて、時としてとんでもない化け方をするものも“まれには”存在する。例えばスコットの『ブレードランナー』(1982)が代表だが、リンチの『砂の惑星』(1984)や、ヴァーホーヴェンの『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997)や『トータル・リコール』(1990)なんかも“化けた”内の一つだ。原作ファンからは無茶苦茶叩かれたが、カルト的な人気を得ている。

 正直、本作はそう言った作品として仕上げて欲しかった。それが私の希望。

 で、出来だが、残念ながら、“無難”そのもの。「おお!」と驚く部分もないし、枝葉部分ではとにかく抜けが多い。一本の物語としてはすっきり作られてはいるけど、本来の小説の持つ良さをことごとく無視してた。

 ここまで引っかかりのない無難な物語を観たかった訳じゃないんだけどなあ。

 で、本作で観たかった自分なりの“こだわり”というものを考えてみると、いくつも出てくる。

 第一に、エンダーの兄ピーターと姉ヴァレンタインの描写。小説でも本筋の物語にそんなに係わってる訳ではないので、敢えてそれを切ったとは理解出来るのだが、何故エンダーがこの世界に生まれたのか。そして実はエンダー以上に能力を持つ二人が何をしているのか?小説ではその辺もしっかり描かれているので、ちょっと匂わすくらいのことはしてほしかった。特にピーターはこの描写では単に暴力的なだけの男になってしまってる。

 第二に、無重力ゲームでエンダーが絶対的な勝者になれたのは、最初に自分の脚をあぐら状態で固定し、それを盾にするという戦術から始まるのだが、そこが一切なかったこと。大好きなシーンだけに、これがカットされたのは寂しい。

 第三に、そして一番の問題点。最後の“ゲーム”だが、あれは元々ラッカムと将棋のようなやりとりをしているとエンダーに思わせる部分が必要。一応言葉で説明はしているが、あの描写だと、そのままフォーミックと戦ってるようにしか見えない。見栄えを優先させた結果と思うけど、そのために本来落とすべきどんでん返しを放棄してしまった。

 これらは一体映像化されたとき、どんな感じになるんだろうか?と、いくつかのこだわりを持って「ここだけは観てみたい」と思ってたものをことごとく覆されると、流石に呆れてしまう。

 風呂敷サイズの物語がハンカチ以下の小ささにまとまってしまうと、どれだけ虚しい気持ちになるのかという一つの例とも言える…でもまあ、あの『デビルマン』とか言う、作品の評価そのものを変えてしまうほど酷いものではないけど。

(評価:★3)

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