[コメント] Playback(2012/日)
少々シネフィル臭いが演出もオフスクリーンの取り込みも音響面でも全く見事な映画である。俳優としての危機を「演じ直す」ことで乗り越える。モノクロ画面を意識したのであろう、主要人物の衣装は学生服、結婚式など白と黒を基調にしている。スケボーの運動感にも目を瞠る。反復によるずれも憎たらしいほど巧い。
それでも私は、ある種のフォーマット(制度と言い換えてもよい)に沿った中盤以降よりも、序盤のどこへ進むとも分からぬ得体の知れなさの方を称揚したい。ショットがいつどこで次に繋がれるか、或いは音がいつどこで始まりどこで終わるか。近年日本映画でこれほど予想できなかった作品は無い。
これは持論だが、傑作か駄作か、ギリギリの綱渡りを繰り返しながら最後まで突き進む作品こそが映画の未来を切り開くのではないか。例えば『勝手にしやがれ』や『めまい』、もう少し歪な出来の映画なら『ションベン・ライダー』の名を挙げてもよい。とにかく、理論を一切破らぬ映画ほどつまらぬものはないと思う。それならまだ山にでも出かけて木々が風に揺れる様を眺めているほうがマシだ。
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