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[コメント] 愛のコリーダ(1976/日=仏)

描写自体が悪い訳じゃないですけど、観てる側に引かせた時点で駄目です。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 大島監督はこの時点で既に日本映画界においては押しも押されもしない大監督として地位を固めていたが、1960年代の社会運動への傾倒が消え去り(これを如実に示したのが『東京戰争戦後秘話』(1970)となるだろう)、1970年代になって、これからどういう方向性で映画を作っていくか。と言う命題を前に、“耽美”を選択した事を決定づけた作品である。この辺ヴィスコンティとよく似た経路っぽいが、そもそも本作は大島監督は『ラストタンゴ・イン・パリ』(1972)にインスパイアされて構想したという。『ラストタンゴ・イン・パリ』自体も世界的な論争を引き起こしたが、それ以上のショッキングな話題をさらおうとする意気込みが本作からは感じ取れる。

 ただ意気込みはともかく、映画としての出来はどうか?と言われるとかなり引く。確かに最初の内は物語性もあるんだけど、中盤以降はただ延々と性描写が続くばかりで、しかも変に文芸調に描くため、完全に飽きる。ポルノ作るんだったら徹底してポルノにするか、大島監督お得意の虐げられた人間を徹底して蔑む描写を入れるべきだったんじゃないか?これまでの自分の作品を否定しても、観てる側はそれを期待するんだから。人間の描き方ももう少し淡々として欲しかったが、この作品に関してはひたすらねちっこすぎ。

 それに物語自体よりも本作の場合は日本映画史における存在そのものの方が面白い。  ここまでの過激な性描写は日本の映倫に触れるものであったため、京都で撮影したフィルムをフランスに送り、現像して逆輸入して規制の網をくぐり抜けたと言う逸話があり、実は日本人しか登場しないフランス映画とカテゴライズされるのが本作なのである。更にその後無修正の写真集「愛のコリーダ」を出版するが、猥褻書として押収されてしまう。裁判には勝訴したが、押収時間を徹底的に長引かせたため、検察省による意趣返しとも言われる。

 合う合わないを徹底的に選ぶ作品なので、本作を観る場合それなりに覚悟が必要。

(評価:★3)

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