[コメント] レイルウェイ 運命の旅路(2013/豪=英)
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まだこういう輩がアングロサクソンの一部に生き残っている事実を憂う前に、日本人はわが国の国粋レイシストたちの存在を振り返るべきなのは確かなのだけれど、これは酷すぎだ。たしかに苛烈な拷問には違いないが、これは戦争のなかで行なわれたことであり、それを楯に一個人の「戦争責任」を問うていったい何が変わるのか。原爆をアメリカが落としたことをリチャード・ギアが日本人に謝罪するのと同じで、何の実もない行為だろう。それよりは核爆弾根絶が大いに論じられるほうがずっと無辜の被害者にとっての慰めとなるだろう。
そして、イギリス人があの戦争においては、アジアの簒奪者の一国であって日本と同じ帝国主義の徒であったことも忘れてはほしくない。この映画で語り手は誇り高き帝国の頂点を謳って憚らない。だからこそ「番号」を数えろと命じられて、ロイヤルストレートフラッシュを揃え始めるようなナメた行動で日本人の神経を逆立てるわけだが、それはともかく、アジアに鉄道を敷けない英国人の本音は、アジアの野蛮人はともかく洗練された英国人の自分が、キツい鉄道工事のために辺境に骨を埋めるのがイヤだ、ということに尽きるわけだ。そんな連中であることを振り返れば、ラジオの製作者は自分だ、と名乗り出た程度のことを「勇気ある」行動などと誰が言えようか。
そんな英国人に、今更「戦争責任」を迫られても心から恥じられる個人がどれだけいるとも判らない。国家の規律が個々人の幸福を縛り上げていた体制を戴いていたのは事実だが。結局、個々人の罪を問うても仕様がないことを英国人は理解できないゆえに、こういう映画で自慰を為すのだろう。
ただし、かくいう自分は今、まさに攻撃の矢面に立つ朝鮮人についても、やはり国家を裁くべきであり、個々人を責めるのは絶対的に間違っているとは信ずるものだ。その程度の柔軟性を持たなければ、こんな映画をつくる頭の硬直した老人に堕することになるからだ。
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