[コメント] 北朝鮮強制収容所に生まれて(2012/独=韓国)
インタヴューとソウルの光景とアニメだけで鈍痛のような衝撃を観るものに与える、余りにも純文学的な傑作。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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強制収容所を描いて何とドストエフスキーもソルジェニーツィンも越えてしまっている。何せ二世の話なのだ。二世も罪人とは全くもって無茶苦茶だが、故郷への郷愁というファクターを欠いているが故に、収容所という場所の意味が純化されて浮かび上がってくる(なお、彼の親の罪状ー将軍様を蔑称で呼んだために捕まったーはソルジェニーツィンと同じである)。
被害者の様を見て義憤に駆られずにいられないのであり、人権保護の見地から解決を摸索する人に敬意を表したい。しかしチラシに右と左の論者がそれぞれ寄せているコメントなど浅薄なものだと思う。この作品は政治利用すれば終わりというような簡単なものではない。云わば人間の条件のようなものが確かに表現されている。
パンフで言及もある通り、彼からはカスパー・ハウザーがまず想起されるが、私はメルヴィルのあの不思議な「代書人バートルビー」がしきりと思い出された。観ればお判りの通り、なぜ母親を告発したのか、なぜソウルの金銭社会が重圧なのか、なぜ収容所に帰りたいのか 当人は説明するが、よく判らない。インタヴューの限界というニュアンスが伝わってくる。このような現場最前線のスリリングさがドキュメンタリーの最良の部分だと思うが、ここではそれが、人間というものに対する大いなる疑問符として立ち上がっている。収容所職員の好対照なふたりも、カフカの世界から抜け出てきたようで忘れ難い。
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