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[コメント] 機動戦士ガンダムUC episode7 虹の彼方に(2014/日)

ここまで来て刹那的な「奇跡」を描くことに一体何の価値があるのだろう。純粋に理想を礼賛するのはたやすいが、このエピソードが『ガンダム』の最終章でないことはスタッフも観客も知っている。「アクシズ落とし」のときの奇跡に屋上屋を重ねてどうするのか。『ガンダム』とは現実認識の上に理想を重ねる物語ではなかったのか。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







もちろん、サイコフレームによるコロニーレーザーの回避のことを言っている。これがSF次元でなく三流ファンタジー用の出来事であるのは明確だし、『逆襲のシャア』時点で、カタストロフの回避に開いた口がすでに塞がらなかった俺には何をかいわんやである。もちろん、その前の「ラプラスの箱」の中二的理想にもげんなりしていたのだ。大人がそこまで物わかりのいい連中ばかりなら戦争なんて起きないだろう。そもそもガンダムシリーズだって根本的に存在するわけもなかったのだ。

それでも悪い点をつけないのは、このシリーズが「ポルノ」としては素敵に出来のいい話だったからだ。劣情をこの上なく煽ってこその「いいポルノ」だが、その上にロマンをてんこ盛りにしてくれたことで、すれた大人も恥ずかしがることなく物語に熱狂できたわけだ。MSVを「バンダイの戦略」としてしか受け取れない半可通はもとより論外だ。当たり前じゃないか、ポルノなんてもとより下卑たものなんだ。ガンダムサーガ幻想をここまで引き摺ってくれたことには素直に感謝したい。…でも、もしロマンを付け足すなら大人が騙されるヤツをお願いしたいのだよ。映画ファンならずともいい年の客はそれを望んでるはずだ。

ミニマムな描写には面白いものもあった。富野監督の描いていた「女性の支配する政権」への皮肉などはその最たるもので、「黒人政権」と同じく価値が見い出されるのは初期までだ、とは当然といえば当然のことだ。女性にしろ黒人にしろ、その思想はほとんどが環境によって構成されるのは自明のことであり、性別や人種に希望を託して正義を望むのはナンセンスだからだ。しかしその考えは「宇宙人類による政権」というものへの幻想にも及ぶことがなかったのは残念ではある。バナージは健やかな感性をもつ少年だが、それは何歳まで続くことかを考えるとき、スタッフのオプティミズムは甚だ不安を伴うものではあるからだ。

(評価:★3)

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