[コメント] インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌(2013/米)
米国版『苦役列車』。本当なら主人公のダメさを嗤いたいところだが、コーエン兄弟の手腕が完璧すぎて嗤えない。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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まず猫の使い方がよい。犬をうまく使った映画は数多観てきた気がするが、猫をうまく使いこなした映画は案外珍しい。シカゴへの短い往復もエピソードの組み入れ方が手際よく、運転手が警官にしょっぴかれて置き去りにされる件りや帰路猫を轢く件りのサスペンスと毒気は極上だ。映像は終止端正だし、会話劇は相変わらず隙がない。亡き相方の影を全編に渡り漂わせる手管も感心するしかない。振り返れば褒めるところしかないのだが、なぜかイマイチ面白くない。完璧すぎて遊びがないからか。
演奏する楽曲を除けば、半世紀前を舞台にした映画という感じがしない。現代を舞台にしてもそのまま通用しそう。その点で深みが不足しているのかもしれない。
つい『苦役列車』を連想してしまったが、『苦役列車』の主人公(=原作者)がその後雌伏を経て作家として名誉を得ることを我々は(事後的ならぬ)事前的に知った上で映画を観ている一方、本作の主人公は本当に「名もなき男」として時代の中に埋もれていく。その救いのなさにやや殺伐としたものを感じる面はある。
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