[コメント] がんばれ!ベアーズ(1976/米)
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1970年代のハリウッド映画はまさに迷走状態にあった。大作を投入しても失敗し、インディペンデント系のぽっと出てきた映画がもてはやされたり…その中で70年代も後半に入ってくると、それでも少しずつ当たりの定式が見えてくるようになってきた。
その新しい形式の一つとしてスポーツを題材に取ったものがある。たしかにそれまでにもTVではあったらしいし、いくつかハリウッド映画にもスポーツものはあったものの、そちらはスポーツそのものよりも大物スターの恋物語や友情、事件などがメインになっていた。それが変わっていったのは、多分『ロンゲスト・ヤード』(1974)でようやく本物のスポーツシーンでも興奮出来るものが作れるようになったお陰だと思われる。
そしてスポーツそのものがメインとなっていく物語構成を体現したのが本作だと言えるだろう。本作のヒットは後の映画作りにも大きな影響を与えることにもなる。単にリトルリーグの野球を見せるありきたりのスポーツ作品にはとどまらず、後のハリウッド映画、それに日本のテレビ番組に大きな影響を与えてくれてもいた。日本のスポ根作品のベースは本作で作られたと言っても良い(本作が日本で大ヒットしたお陰で本作の第3作は日本を舞台としている。現時点では私は未見だけど)。
今からすれば本作は一見ありがちな作品に見えつつ、実はハリウッド映画史を語る際、重要な意味合いを持つ作品でもあったのだ。
エポックメイキングになるだけあり、映画としても本作は質が高い。本作では勝負にこだわることと、チームプレイの大切さとの両立がきちんと描かれていると言う点だろう。バターメーカーは最初は全然やる気がなかったのに、勝負事になるとムキになるため、ついつい「勝ち」にこだわるようになる。それに応じてチームメンバーの質もどんどん変わっていくことになるのだが、成長していくのはチームメンバーだけではない。バターメーカー自身もやはり成長していくのだ。最後の大勝負を前に、勝負よりもチームの和を優先するその姿は、確かにぐっと迫ってくるものがある。これは勿論マッソーのキャラクタ性の良さでもあるけど。
マッソーも良かったが、それ以上に良かったのがやっぱりオニール。既に彼女は前作『ペーパー・ムーン』(1973)で最年少オスカー女優を得ているが、こっちの方がむしろ活き活きと演じられている感じがする。それにテイタムはこのために随分野球の特訓をしたらしく、しっかりピッチャー役を果たしていた。そもそもテイタムは父ライアンから高校卒業までは女優休業を命じられていたが、本作のシナリオを読んだテイタムとライアンはすっかりこの作品を気に入ってしまい、その方針を変更しての出演となる。ただし、テイタムは野球を全く知らず、その事がばれたら役を降ろされると思い、製作者や監督には隠してライアンと特訓したとか。
本作の脚本はビル=ランカスター。バート=ランカスターの実子で、シリーズ全作に関わっている(他の映画にはあまり関わっていないが、『遊星からの物体X』(1982)の脚本も書いている)。
尚、撮影が行われた町チャッツワースには野球場が無かったので、撮影用に野球場を作ってしまい、撮影終了後は町に譲り渡したという。
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