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[コメント] インターステラー(2014/米)

いろんな引用があからさまにあるのは嬉しいんだが、「これって『ゼイリブ』じゃね?」と思わせる部分はいただけない。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 本作の場合は、当初はディストピアもの、あるいはエクソダスものと思わせておいて、冒頭部分に置かれた伏線を回収するために超次元世界を出すという形を取っている。誰も見たことのない世界を映像化するわけだから、この部分は観念化せざるを得ず、その部分が本作の非常に特徴だったところになっているのは確か。そして多分、あの超次元的描写こそが一番撮りたかったところなんじゃないかとも思っている。それが上手く行ったかどうかはともかくとして、観念的でありつつ、ちゃんと視聴者に理解できるように作られているし、広げた風呂敷を畳むために使った観念的描写がきちんと物語のオチとしての機能を果たしている。

 SF的な用語や小物(特にTARSやCASEの存在感)も、敢えて難しくしないよう出来る限り平易なものを用いている小技も素晴らしい。これだけ小難しい題材を、きちんとヒットできるよう緩急織り交ぜた演出も冴える。

 そのため、全般的に本作の好感度は高い。

 ただ、全般的に本作を観てみると、なんとなくいろんな映画のつぎはぎって印象もある。作品の端々に『2001年宇宙の旅』とか『コンタクト』から来てるとしか思えない部分もあったり、日本のアニメの影響も結構強そうだし(『トップをねらえ!』と『ほしのこえ』(2002)っぽいところが散見されたり)、TARSやCASEは『2001年宇宙の旅』のHALと『サイレント・ランニング』(1972)のロボットから。何よりタルコフスキーっぽい描写がやたら多いな。そりゃ本作の先駆的作品とも言える『惑星ソラリス』の影響も強いけど、『』(1974)や『ノスタルジア』(1983)、『サクリファイス』(1986)からも結構な引用が感じられる。それと物語のメインはいろんなSF小説からだろう。特にクラークの「2001年」や「幼年期の終わり」の影響は多いようだが、「タウ・ゼロ」や「メトセラの子ら」など、数多くのSF小説が引用されているようだ。でも一番引用が大きいのは星野宣之の漫画「2001夜物語」なんじゃないかな?その辺の描写がちょっと気になってしまって、集中できなかったかな?

 あと、超次元的な描写を盛り込み、そこから得られた叡智が人類を救うことととなった訳だが、それ以前の冒険とかが全部ひっくり返されてしまったのが虚しい。偶然ワームホールに入り込んでしまっただけで全てが解決されるなら、それ以前の物語は、たまたまそこに至る意味のない道筋になってしまう訳だから。そんな意味では寄り道が長すぎるよな。最初と最後をつなげるストーリーに意味をもたせるんだったら、途中の無意味な冒険譚も、某かの意味をラストに持たらせてほしかった。

(評価:★4)

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