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[コメント] スキャンダル・シート(1952/米)

これは良く出来た犯罪映画。私は出来過ぎのイヤらしさを感じてしまうぐらいだ。それは、人物のモチベーションの隙のなさ、云わばその理屈を十全に担保し過ぎである、といったことから感じられると認識する(ま、普通は褒めるべき点ですが)。
ゑぎ

 例えば、編集長のブロデリック・クロフォードが、どうしてその事件をトップ記事として扱い続けるのか。ラストの彼の逡巡と選択の理由もそうだ。

 素直になって褒めるべき点を記そう。NYのビル群から始まり、オフ(画面外)でサイレンの音を聞かせながら、ティルトダウンして道路のパトカーを見せるオープニング。次に、唐突に事件現場の証人の女性へ素早く前進移動するカットを繋ぐのはインパクトのある演出だ。こゝから、主要人物を順次登場させる見せ方もとても手際がいい。主要人物とは、記者のジョン・デレク、その相棒でカメラマンのハリー・モーガン、2人が新聞社に戻って、同僚のドナ・リード、そして編集長のクロフォード。この冒頭で、編集長−クロフォードの社での状況や、デレクとリードが持つ編集長に対する感情なども端的に示される。

 この後も、目が釘付けになるような画面が連続する。「ロンリーハーツクラブ」と名付けられた婚活パーティ場面の凄いモブ(ダンスする人々)の俯瞰。クロフォードを見て顔色を変え、人をかき分け歩いて来る女性−ローズマリー・デキャンプの俯瞰ぎみの移動ショット。2人(クロフォードとデキャンプ)が入った部屋の鏡に、窓の向こうで列車の走る様子が映るという凝った造型にも唸らされる。

 そして、終盤の夜の新聞社のシーン。灯りの消えたオフィスの中、編集長席の机のライトだけが灯っているという状況が実に見応えのある画面を作る。席に座っているクロフォードは、上体を起こすと陰に入るが、前のめりになると、顔に光があたる。デレクやリードは、光の届かないところにおり、陰の中だ(でも勿論、ローキーの中でも観客には見えるように映されている)。この照明設定の中で、人物の出入りをコントロールする演出のなんてクレバーなこと!いや、やっぱり、フィル・カールソンって素晴らしい。

#備忘でその他の配役などを記述します。

・かつての敏腕記者で、今は飲んだくれのチャーリーはヘンリー・オニール

・事件の担当刑事(警部補)はジェームズ・ミリカン

・新聞社社長はジョナサン・ヘイル。終盤出て来る元判事はグリフ・バーネット

・クロフォードとデキャンプは、シーゲルの『暗闇の秘密』でもパートナーを演じていた。

(評価:★4)

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