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[コメント] ハリー叔父さんの悪夢(1945/米)

本作も、面白さということでは、私が見たロバート・シオドマクの中で、一二を争う作品だ。
ゑぎ

 丘の上から見たニューイングランドのコリンスという町。典型的なスモールタウンものだ。先祖が銅像になっているという名家の3兄妹、ジョージ・サンダース(ハリー)、モイナ・マクギル(へスター)、ジェラルディン・フィッツジェラルド(レティ)を中心に据え、サンダースと恋仲になる、NYから来たエラ・レインズを加えた、この4人が主要人物だ。さらに加えるなら、メイド役のサラ・オールグッド(『わが谷は緑なりき』のお母さん)をあげるべきだろう。使用人である彼女が主人側のマクギルと云い合う場面が何度か出て来て面白い。尚、タイトルには「ハリーおじさん」とあるが、サンダースが誰かの叔父(伯父)という設定を表しているのではなく、職場での仇名を意味している。若いのにオジサンみたい、という含意があるのだろう。

 サンダースとレインズとの恋の成り行きについては、ちょっと雑かと思うところもあるが、彼が、車庫の二階に9インチ望遠鏡を自作しており、二人で土星を観察するシーンなんかは、しっとりとした良いシーンだ。マクギルが二人を見つけ、告げる場面でのフィッツジェラルドの顔演技も見事なもので、一瞬だが強い嫉妬の感情が表出する。こゝから、フィッツジェラルドは、兄のロマンスが成就しないように、巧妙に仕掛けて行く。サイコパスもしくはパラノイアとしてのフィッツジェラルドの描写は、今見るとマイルドな演技・演出にとどまるが、倒錯した愛情も確かに伝わって来る。

 中盤の、レインズの部屋にフィッツジェラルドが訪ねて来て二人だけで対峙するシーンは、大きな見どころだと思うが、ここで先にフィッツジェラルドが感情的になる演出は、ちょっと興覚めでした。レインズを直情的に描き、フィッツジェラルドは冷静な悪女、とした方が、一貫性があったように思う。

 この後、タイトル通り、サンダースにとって悪夢のような展開になる。本作はエンディングの後に「ラストをお友達に伝えるのはやめてください」という主旨の文が出るような映画なので、勿論、詳述は控えるが、毒殺事件の顛末が、プロットの中心になるのだ。しかし、ラストのフィッツジェラルドへの演出は、全く鬼気迫る、とだけ記載しておこう。このまゝ彼女のカットで終わったら最高だったのに、と思いながら見た。

#備忘

・コリンスクラブという社交場で、サンダースがピアノを弾き、男達が合唱するシーンがあるが、メンバの中に、ウィル・ライトがいる。

・モイナ・マクギルという女優は初めて意識したが、アイルランドの有名女優のようだ。アンジェラ・ランズベリーのお母さんとのこと。

(評価:★4)

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