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[コメント] 札束無情(1950/米)

キューブリックの『現金に体を張れ』を先取りするような、タイトな犯罪映画の傑作だ。悪役も多いチャールズ・マックグローが本作では渋い刑事役。この部分では、同じフライシャーの『その女を殺せ』を導く作品とも云えるだろう。
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 そして、本作の悪役は、アイダ・ルピノ『ヒッチ・ハイカー』のウィリアム・タルマンだ。ちなみに、マックグローもタルマンも仰角で登場する。以降、仰角の画面が目立つ。例えば、現金強奪作戦の計画を練る場面の緊張感創出に、仰角構図が大いに寄与するのだ。

 タルマンの仲間にはダグラス・フォーリースティーヴ・ブロディジーン・エヴァンス(フラー作品常連!)という犯罪映画ファンお馴染みの三人がおり、フォーリーの妻で、ストリップショーのダンサーが、アデル・ジャーゲンスという人。この女優、劇中で皆から「上玉」と云われるが、ちょっとヴァージニア・メイヨに似た、確かに上玉なのだ。タルマンの非情ぶりが際立つ場面は、現金強奪後の港の隠れ家で、負傷した仲間を躊躇なく殺すシーンだろう。

 後半の逃亡・追跡の活劇展開になって、演出の見せ場も目白押しになる。例えば、バーレストランの、同じ店舗の中の離れた電話ボックスを使った会話シーン。マックグローの相棒の刑事、ドン・マクガイアが、ジャーゲンスの車に乗せられ、倉庫街へ連れて行かれる場面で機能する、車の中の盗聴器。タルマンのラストも見事な帰結の見せ方で、邦題が象徴するイメージが画面で実装されるのだ。

#エピローグは病院のシーンで、看護婦が病室から慌てて出ていく、という演出がある。これって、入院患者が、手を出していた、ということだと思うのだが、面白いが、なんか本作にはそぐわないユーモアだと感じた。

(評価:★4)

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