[コメント] キャロル(2015/英=米=仏)
久々の「女の匂い立つ」映画。ルーニー・マーラの清楚なコケティッシュさも見ものなら、対するケイト・ブランシェットの熟れ果てた妖美の屹立にも気を高ぶらせられずにはおかない。ふたりの関係進展が予定通りであり、キャロルの対応があらかじめ用意された媚態であったとしても、それはふたりの関係性を決して損なうものではない。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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「予定通り」と書いているのは、作中でキャロルと過度に親しい存在であるアビー(サラ・ポールソン)のことを踏まえて書いているのだが、彼女との関係からキャロルが同性愛嗜好を引き出され、そして確信犯的にテレーズと接近した、ととれなくもないあたりだ。まあ、ここで打算のない純愛を求めるのは日本的なケジメの強要であって、このカップルには求めるべきではないのはもちろんだ。
…というか目的が打算でも「純愛」は育み得るくらいに思っていていいのだろう。舞台は日本ではないのだ。示唆的にもこの映画の終幕ちかく、いかにも「投げっぱなし」のようなシーンが用意されていることについて、監督トッド・ヘインズは『卒業』になぞらえた発言を行なっている。これは面白い。同性愛に否定的な当時のアメリカ社会で、キャロルとテレーズは『卒業』のダスティン・ホフマンとキャサリン・ロスになる。ここで物語はリアリズムを脱ぎ捨ててファンタジーとして離陸する。結末を知っているのは見えざる神のみというわけだ。しかし、おおむね今までの同性愛映画には、悲劇的結末がつねに用意されてきた事実を思い出してみれば、このラストは画期的であり、革命的な意味をはらんでいるといえる。だからこれは、現代の観客に向けられたエールに等しいだろう。
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