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[コメント] 掟によって(1926/露)

登場人物とプロットはソ連映画と思えない、ジャック・ロンドンの原作なのだ。舞台背景はユーコン川の砂金採り。『野性の呼び声』(『野性の叫び』)などと同じ。手前に川が流れ、奥に丘と一本の木がある風景。
ゑぎ

 砂金取りチームは5人で、一人一人紹介がある。まず最初にテントから出て来るのがアイルランド人のデニン、犬と一緒に川へ水を汲みに行く。笛を吹きながら犬と遊ぶ。続いてリーダーでスウェーデン人のハンスと、その妻で英国人のイーディス。あとはオランダ人2人か(一人はダッチと字幕が出る。もう一人は国籍が出ないが、続けて紹介されたので、こゝではオランダ人ということにしておく)。この冒頭では、デニンが良い奴かと思わせるが、彼は食事の世話を担当していたりして、チームの中では下働きのような最下位の位置づけだと分かって来る。

 皆で食事中に、もうこゝもダメだな、場所を変えようという話になり、デニンが採集場の片付けを命じられる。そこで彼が木製の樋などを片付けていると、運よく砂金を発見するのだ。冬の間、幸せは逃げなかった、みたいな字幕が出る。

 しかし、日にちが経過し、デニンは愚痴る。砂金を見つけた俺に洗濯ばかりさせやがって。そして、デニンを除く4人が食事中、遅れて小屋に入って来たデニンは、いきなり発砲し、オランダ人2人に命中する。内一人は即死。まさか、こんな展開になるとは思いもよらず、吃驚した。息のある一人は、テーブルの上の皿に頭を乗せて突っ伏し、少しずつ、ずり落ちそうな体勢になる。いや、この絵面も面白い。この人もやゝあって絶命する。イーディスとハンスは、デニンを取り押さえ(というか、イーディスが格闘し)、縄で縛る。ハンスはすぐに殺そうとするが、イーディスは、ハンスを止めて、法で裁くべきと云う。こゝからがメインのプロットなのだ。

 その夜、大雨の中、2つの死体を埋めるシーンも見せる。ずぶ濡れになりながら地面に穴を掘り、遺体を埋めるイーディスとハンス。その間、なんとか縄をほどき、逃げようとするハンスの様子をクロスで繋ぐ。その後、川の氾濫で小屋は床上浸水し、川の中の孤島のようになるというシーケンスと、デニンが逃げないか見張る辛さなんかが描かれて、ようやく水が引いたので、ということで、今から法でさばきましょうとなる。ヴィクトリア女王の肖像画を壁に貼り、英国法で裁判を行うと云うが、結局イーディスとハンスの2人で決めるのだ。私刑じゃないか。さらに、エンディングにも一ひねりあって、驚かされるのだが、至極いい加減なプロット展開に感じられてしまう。しかし、全編に亘って強い画面の溢れた映画で面白いことは面白い。全編、イーディスの目ん玉演技も凄い。

(評価:★3)

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