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[コメント] コタンの口笛(1959/日)

アイヌの絵をバックにクレジット。伊福部昭の音楽がいい。コタン。村の俯瞰。多分、近くの山上から撮ったカットなのだろう。パンニングして辺り一帯を見せる。この川のある村のロケーション、オープンセットが素晴らしい。
ゑぎ

 姉マサと弟ユタカ。ユタカは久保姓時代の山内賢だが、当時の彼は、どの出演作を見ても見事なものだ。父親は森雅之。黒々とした髭をたくわえており、アイヌ人らしく作っている。隣家には水野久美三好栄子が住んでいる。三好は姉弟の祖母でもあるのか。前半、水野が明るく可愛いので、映画に華やかさ出る。中盤で退場してしまい、再登場するかと思ったが、ほったらかしにされるのは成瀬らしさだろう。

 その他多くの人物が登場する群像劇でもあるが、もう少しだけ、こゝに書くとすると、倭人で、人格者として尊敬される小学校の校長・志村喬とその息子の久保明(山内賢の実兄)。あと中学校の美術教師・宝田明を上げておくべきだろう。久保は水野と仲がいい。

 倭人はシャモと呼ばれる。中盤以降、ユタカの中学校での、いじめ・からかい、それに対するユタカの戦いと、久保と水野の結婚差別が描かれ、さらに、不幸も続く展開になるが、宝田と姉マサとの交流は清々しい。

 成瀬らしいカッティングでは、ユタカが夏休み、叔父さん・山茶花究の海辺の家に遊びに行った場面。従兄の幸次・大塚国男が浜辺で石を投げるカットに続けて、打ち上げ花火のカットを持ってくるというキャッチーな繋ぎが見られる。あるいは、終盤で、ユタカが夜、いじめっ子と学校のグラウンドで決闘をする場面。バットで襲われる途中で、家の父と姉の姿に切り替える繋ぎ等。

 本作でもエンディングで登場人物の唐突な死を描く成瀬。この展開に持ち込まないと気が済まないかのようだ。しかし、本作でも、ラストカットは、道を歩く複数人の後ろ姿であり、私には、悲嘆にくれるだけでない、将来へ向かって歩む力強さを感じるのだが、これを見てどう感じるかは観客の心性にもよるだろう。

#備忘でその他の配役等を記述。

・森の名前はイヨン。水野久美はイカンテフエという。

・小学校の校長・志村の妻は、一の宮あつ子

・アイヌの先生に土屋嘉男、熊の木彫り人形を作るワカルパに田島義文

・森は呑んべえ。佐田豊中北千枝子の夫婦がやっている酒場がワンシーン。

・中学校の用務員は左卜全。フィリップと呼ばれている。すまんが笑ってしまう。

(評価:★4)

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