[コメント] サウスポー(2015/米)
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ジェイク・ギレンホールががっしりとヘビー級ボクサーを演じるために役作りをしたということで興味がありましたし、最近わりとボクシングを題材とした作品を見る機会が多いので、その辺りと比べてどの辺りに位置付けできるか、というのも楽しみに鑑賞しました。
まず、他のどの作品よりも舞台が新しく華々しい活躍をしている選手というスタートで差別化はできていると思います。冒頭からすでに世界チャンプですし、負け知らずのファイターとして大人気。ただ、他のボクサーとはまた異質で、滅茶滅茶打たれまくります。ボコボコで血もダーダーです。もちろん敵への挑発の意味もありますが、彼自身が殴られて燃えるタイプらしく、力で強引に打ち合って相手を負かしてきたのがわかります。個人的には格闘技はテレビでやっているのと見る程度。しかし、この手のファンを沸かすボクサーは嫌いではない。ガタイも良く、ハードパンチャーという感じも好きですし、何より雄叫びを上げた姿がかっこいいこと。いかにも現代チックな会場の感じは好感がもてませんが、それをかき消すほど主人公に魅力がありました。
ただ、他の作品と違い、本作は栄光を経験している立場からの転落が鍵。それこそ前半の試合、ファン、戦績、ベルトだけでなく、美しい妻がいて、愛する娘がいて、立派な豪邸があり、と見るからに幸せな生活が崩れ始めます。 妻の死、家庭崩壊、娘は施設へ預けられ、嫌われる。試合では初の負けを経験。審判への暴力で資格も剥奪で出られずに、金もない。住む所もない。まさに身も心もボロボロの状態になってしまいます。 この絶望していく様を演じるジェイクはやはり演技の上手さが光りますが、それだけに切なさも際立ちます。
どん底からの復活は見もの。トレーナーにバーで問われ、自分と向き合う。今までのスタイルは攻め一方。守ることはしなかった。妻も心配した。それは戦わないで、ということではないのに。そして妻を連れ失った。全てを任せっきりになっていた自分の右腕とも言える妻を。失って初めて守ることを知った。右腕を失ったなら左腕で。妻の分も。いろんなものを守っていかなきゃいけないから。守りたいだけでなく攻めの一発。グッときた。ジーンとした。
ボクシングを題材にはしているが、ヒューマンドラマ要素も強く、染みる部分も強かった。最後の試合は白熱した分、もう少しカメラワークとか工夫できたらもっと興奮できたんじゃなかろうか。 いや、それにしてもいい作品だった。
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