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[コメント] 東京の英雄(1935/日)

清水宏の最後のサイレントか。これも前年の『金環蝕』と同じサウンド版だ。クレジットバックには主題歌が流れる。冒頭は原っぱの土管と突貫小僧ら少年たちとその後景を走る電車のショット。
ゑぎ

 これをディゾルブで反復し時間経過を表現する。これと同様の趣向をあと2回見せる。まだ序盤、突貫小僧の家−父母は岩田祐吉吉川満子、妹−市村美津子、弟−爆弾小僧(妹弟は吉川の連れ子)−が没落したことを示す、部屋の家財が減っていくことを表現したディゾルブ繋ぎ。そして、突貫小僧がリレーして大人になった、藤井貢が大学を卒業し、就職した(新聞記者になる)ことを示す、彼の学生服姿からスーツ姿へのディゾルブ繋ぎだ(途中、仮縫いの背広を着たショットを挟む)。

 また、矢張り冒頭近く、原っぱの土管の上で、突貫小僧と友だちの葉山正雄が父親の話をする際に、執拗にドンデン(180度のカメラ位置転換)の繋ぎを見せるのだが、この趣向もこゝぞという場面で反復する。例えば、スーツ姿になった藤井が母(義母)の吉川に優しい言葉をかける(日本一のお母さんですと云う)場面。こゝは家を出て行った妹弟(吉川の実子)−リレーして桑野通子三井秀男の母・吉川に対する態度と対比を利かせる見せ場だ。この前後で、例えば吉川と三井が対峙するシーンをほゞ正面ショットの切り返しで繋いだ演出なんかがあるので、よりドンデンが強調されて感じられる。

 さて、本作も古い日本映画にホントウによく出て来る、水商売の母と子のモチーフを扱った作品だ。母に反発して、あるいは周囲から差別を受けて、グレる子供の様子もセットで描かれる。本作では桑野は銀座の街娼になり、三井はチンピラになる。また、同時に血縁のない藤井が、育ての親としての吉川に一番優しいという一筋縄ではいかない親子(家族)の絆もテーマであり、終盤は、ずっと消えていた父親(藤井の実父)−岩田が再登場し、藤井から糾弾される。しかし、この父子の場面はちょっと性急だし、やり過ぎの感はある。

 桑野通子についてもう少し触れておくと、登場シーンは着物姿だが、嫁ぎ先から離縁されて戻って来る場面−コート姿の脚のショットで表現される−以降は、ずっと洋装であり、街の女になってからのフルショットなどでも抜群にカッコいいと思う。例えば桑野と三井が2人道を歩くフルショットに繋げて、吉川が女中の出雲八重子に、家出した桑野を回想し、「着物よりも洋装が似合った」と云う場面がある。ちなみに、桑野と三井が道を歩くショットは、前半にあった藤井と三井が道を画面奥へ歩いて行く後ろ姿のショットや、それに続く、三井とカノジョの高杉早苗が道を手前に歩いて来るショットを思い起こさせる。

#備忘でその他の配役などを記述します。

・序盤の子供たちの中に、加藤精一もいる。屋敷の婆やは高松栄子

・藤井が新調するスーツの仕立て屋は谷麗光。新聞記者の同僚で近衛敏明

・藤井がインタビューする松竹少女歌劇団の女優は京町みち代

・藤井が尾行した銀座を歩く女性は御影公子。桑野の友人だった。

(評価:★3)

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