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[コメント] クレオパトラ(1963/米)

シーザーにクレオパトラが云い寄る。「貴方は世界をひとつにできる。平和にできる」ああなるほど、封建時代の平和とはそういうものかと気づかされる。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







だからこの女王は名武将に懸想し続けたのだと納得させられる。ここが本作の肝だろう。しかし、アレクサンダーとの関係を描く後半にこの切り口が現れないのは不満、ただの恋愛ものになってしまった。監督は「私が意図したもののパロディになってしまった」と語ったらしいが、この欠落を指すように思われた。

美術的にはさすがに見処が多い。最高なのは冒頭の馬鹿でかい亀の置物だろう。貴人の登場時に木魚のように両側から巨大な撥で叩くのだ。戦時に炎の球を投げ飛ばす投石機もノンビリしていていい。京マチ子みたいなオバサンが炎で検見する占いも愉しい。クレオパトラ参上のパレードはオリンピック開会式みたいなもので、ブラジルのラテンチームも千と千尋の神様もいる。アクティウムの海戦における戦艦の再現は箆棒な美術で、しかしこれも戦闘自体がノンビリしたものだからクライマックスに相応しかったかどうか。

一方、気の抜けたような場面も多く、特にやたら論争するローマ元老院は野球の外野スタンドみたいで、これも史実通りなんだろうが迫力に欠けた。ただ、この議決を持って場外に飛び出し、蝟集した聴衆にオクタビアンのロディ・マクドウォールが合議をはかる件は、直接民主制の名残りを窺わせて勉強になった。そしてエジプトの特使であるヒューム・クローニンが弓で倒される見事なショットが続く。このクレオパトラの老側近は、戦争抑止のための軍備増強はナンセンスだと語っていた。いつの世も同じど壺政策というのはあるものである。

クレオパトラとアレキサンダーが上座に並ぶ宴席の件があり、ふたりは左右に並んで座っているのだが、途中でこの左右が入れ替わるのだ(ギリシャの出し物の辺り)。これは不思議で、ケアレスミスなんだろうか、それとも入れ替わった以降はアレキサンダーの幻覚ということなんだろうか。その他、フィルム切りまくった成果で他にもいろいろ説明不足は多い。息子の延命との取引を裏切る自殺は、息子はどうなってもいいということなんだろうか。それではあんまりだと思う。エリザベス・テーラーの化粧は本邦アニメの先駆だろうか。マーティン・ランドーが格好いい。

(評価:★3)

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