[コメント] 娘・妻・母(1960/日)
当時の豪華キャストでこのような作品を撮ってしまう当時の世相が凄い。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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まずは仲代達矢と原節子というカップルが凄い。めちゃくちゃだ。この二人が並んでいるだけで異様な程の違和感を感じるんだけど、それがまたいい。この二人の恋は成就する事なく終わってしまった訳ですが、一見、年上女の原節子が年下男子の仲代と一時遊んでみたダケという風にも見えます。それほど原さんには、一種のオトナの女の色気があった。清潔な貞女という今までのキャラを逆手に取ったその色気は、オーラが見える程すごかった。だからこそなお更遊びの恋のようにも見えるんですが、私にはもう早苗の気持ちが痛いくらい伝わってきて、あの場で踊って終わらせたあの恋が、もう胸をぎゅうぎゅう締め付けるんです。苦しくてほろ苦くて、こんな上質な失恋シーンはかつて見た事がないくらい。
そうして、そこまでして離れた恋も報われる事なく、話は二転三転する訳で…。そこが避けられない訣別を描いた『晩春』や『東京物語』との違いであり、だからこそ観終わった時のやるせなさったらこの上もない。私はこの嫌な気分をしばらく引きずってしまったのですが、やはりそれだけ作品の完成度が高いという事でもあるのだと思います。
それにしてもラストがまた素晴らしい。非情なほどに物悲しくもありながら、どことなく感じられる希望のようなあたたかみ。当時の豪華キャストでこのような作品を撮ってしまう当時の世相が凄い。
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09.07.14記(09.07.12DVD鑑賞)
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