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[コメント] 少女(2016/日)

三島監督の作品という評価基準であれば最高傑作と言えると思うが、一般的な基準で考えれば駄作寄りの凡作。
Master

**ネタバレ注意**
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監督、主演二人の「幅を広げる」と言う観点からすれば、最適な題材ではあるかもしれないが、あまりに荷が勝ちすぎていた。

女子高生にインタビューをするなどして、努力した形跡もわかるのだが、本田翼山本美月の二人に対して、パブリックイメージと違うものを引き出そうとしすぎで端的に言って痛々しい。

三池崇史監督が稲垣吾郎に施したような「魔法」をそう簡単に使えると思ってもらっては困る。主演二人の役割を逆にした方が、演技の面においてまだ障壁は少なかったと思う。それでもかなり困難な役で、それを三島監督が御しきれたかどうかは個人的には疑問でしかない。

そして演出。17歳の少女たちが持つ閉塞感や友情にこだわったようだが、そのための改変があまり効果的とは思えない。冒頭の「遺書」に関する芝居的シーンは、原作では読者のミスリードを狙うものとして重要なものだが、本作では意図がわかりにくく下手な棒読み聞かせられてもさぁと言う程度の感想にしかならない。

メイポールダンスも入れ込む意味が全く分からない。歴史・伝統(=閉塞感)を強調したいのはわかるが、校長のスピーチやら「ごきげんよう」やらガチガチの制服やらで十分それは伝わっている。

剣道のシーンも個人的には違和感がある。チームメイトには口では慰めていても眼は責めてる芝居をさせるべきではないのか。はっきり責める言葉を吐かせるために必要な表現はなされていないと思う。本作中に何度か出てくるSNS演出だって使えただろう。

あと、チラッと出てくる「星羅」という少女の自殺理由を明示しなかったのはいただけない。これを入れると話の焦点がブレるため、カットしたのだろうが原作においてはかなり重要なエピソードである。ここを削るのは下策である。

17歳ぐらいの少女の不安定さを描くのであればフランソワ・オゾンのその名もズバリの『17歳』という作品もあるし、湊かなえの作品を使わなくても良かったのではないか。

一流選手と同じ「道具」を使っても同じ結果は出せない。わかりきった真理を再確認する鑑賞時間であった。

(2016.10.10 シネプラザサントムーン)

(評価:★3)

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