[コメント] ストックホルムでワルツを(2013/スウェーデン)
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普通の伝記映画と赴きを異にすることは明らかです。念願だった本場アメリカのジャズ奏者との共演が叶い、これを成功させ、長年喧嘩続きだった父親とも和解し、帰国後はこれも長年付き合いのあったベース弾きと結婚する。言わば彼女の人生の絶頂点で幕を閉じるのですから。
確かに、“娘が失敗して傷つくことを心配する”という度をはるかに越して、ほとんど娘を邪魔しているようにしか見えない父親が、そんなに優しい言葉をかけることができるのだったら、もっととっくにそうしているだろうと思えました。リアルな映画であるとは言えないかもしれません。
しかし、それまで彼女が味わってきた辛酸、苦労、孤独感のすべてが実を結ぶ、ドラマのフォルムとしてはこの上なく美しい姿形を形づくっていたと思います。そして、そうであるからこそ、彼女が主に私生活で味わってきたそれらの辛苦に、母国語でジャズを歌うという新しい世界を切り開いた彼女の、時代の先駆者としての苦悩を重ね合わせて読み取ることができたのだと思います。
見終えて少し調べましたら、やはり彼女の父親は若い頃ミュージシャンを目指していたのだそうです。また、主演のエッダ・マグナソンが、モニカ・ゼタールンドの写真に本当にそっくりでびっくりしました。スウェーデンの人口950万のうち、50万人を動員したという、日本で言えば600万人以上が観た計算になる理由の一端を覗いた気がしました。
80/100(15/03/15見)
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