コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] シンプル・シモン(2010/スウェーデン)

おそらくは作者の心優しさのために、物語の暴走に歯止めが掛けられている。私の希望を云えば、騒動の規模をもっと大きくしたい。たとえば、ビル・スカルスガルド以上に奇天烈なキャラクタを彼の周囲に配置する、彼を犯罪(計画)に巻き込ませる、すなわち騒動の震源をスカルスガルドの他に置くなどして。
3819695

ところで、誰かが誰かを無償のシンパシーでもって、手を替え品を替え言葉の限りを尽くして説得する光景は、道理と分別の弁えも覚えずにただ無闇と感じ易いばかりだった小童の砌『フラニーとゾーイー』を読んで以来、壮年を迎えんとする現今に至るまで私の弱点であり続けている。

したがって、ドラム缶の宇宙船に閉じ籠ったスカルスガルドにマルティン・ヴァルストロムセシリア・フォルスが言葉を投げかけるさまにどうしても感動を抑えきれないのは私個人の性質に拠るところも大きいだろう。しかしながら、映画の感動の秘密がこのようなコミュニケーションの量的・質的な非-対称性にあることも古今東西の多くの作品に見出すことができる。たとえば、死者に語りかけること。動物と話すこと。玩具を友達にすること。打算の裏づけを欠いた一方的な働きかけが、観客のまなざしに耐えうるアクションの純粋をもたらす。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。