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[コメント] ぼくのおじさん(2016/日)

北杜夫の温さそのまんまの映画で、松竹喜劇旅行シリーズとの同時代性を感じさせるものがあり嫌いじゃないんだけど、こういうのは尺90分で十分だろう。タチっぽさは皆無。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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初期の『どんでん生活』などの幻影が仄見える設定で、その筋のファンを期待させるが満足には至らない。北杜夫にあんな過激さはないうえに、途中から真木よう子の話になっちゃって、松田龍平を掘り下げようとしないからだろう。彼の靴下に開いた穴は清潔な服装の脱線に過ぎないし、万年床は綺麗な部屋のなかにあって冴えない。綺麗な部屋を万年床で侵犯していると云おうと思えば云えるが。山下はもうあの世界に戻らないんだろうか。

真木よう子の日系農園労働者の脇筋は、山下・須藤がどこまで本気なのかは判らないが、松山の『山河あり』や新藤の私映画の諸作のその後を垣間見せるものがあり、個人的には面白かった。常にドンパチで描かれるパールハーバーの平時の光景が興味深い。ハワイ行きは資本主義からの脱出だ、みたいな松田の科白があり、これはエンドロールでも繰り返されるから重要視されているようで、『マイ・バック・ペイジズ』の監督は北杜夫の時代に還ることにより現代を相対化しようと試みているのかも知れない。しかしその主張もまた温いままに終わってしまった。

先生役の戸田恵梨香が感じよく、ラストのオチがいい。子役も良好。

(評価:★3)

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