コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 女の中にいる他人(1966/日)

江戸川乱歩が激賞したという海外ミステリー小説が原作。それもあってか、ストーリ主導というか、いかにも小説家が考えそうな、奇矯なプロット展開主体になっていて、例えば、嫉妬心のようなものがまるで描かれず、成瀬としては、私には物足りない。
ゑぎ

 とは云え、成瀬巳喜男らしいカッティングは冴えわたる。異なる時空を、小林桂樹が持つタバコで繋ぐマッチカットだとか。あるいは、小林の妻・新珠三千代の登場カットが、唐突なバストショットであったりとか。雨、雷、打ち上げ花火の挿入だとか。

 そして、本作の演出の白眉は、二度ある、小林から新珠への「事の次第」の告白シーンだろう。一度目は、停電した屋内で、新珠に蝋燭を持たせて振り返らせる演出。稲光が見事な効果を発揮する。二度目は神経衰弱になった小林が、休暇を取って温泉に旅行し、新珠と二人で散歩する場面。トンネルの中に入り、こゝもローキーのお膳立てをした上で告白する。また、トンネル内をトラックを通過させることで先の稲妻と同じような効果を得る。さらに、露光オーバー気味のカットとの対比も効いているし、もっと云えば、トンネルに入る前に、川原で新珠が明るく燥(はしゃ)ぐシーンがあり(このシーンの新珠は可愛い!)、その上での告白、というこの対比も登場人物と観客の感情を揺さぶる上手い演出だ。

 全般に屋内シーンでは、人物を縦構図で、しかも手前に横顔、奥に正面を向いた顔、という配置を何度も使う。小林の横顔が手前で、奥に新珠が正面を向く、といった、つまり、お互いに視線を交錯させないカット。

クロード・シャブロルが同一原作を、1971年に映画化している。日本未公開扱いだが、『一寸先は闇』というタイトルで一部上映されていおり、こちらも見たが、比べると、私はシャブロルに軍配を上げる。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。