[コメント] ぼくを探しに(2013/仏)
プロレスをダンス的に解釈したシーンは感動的だが、総じてシルヴァン・ショメは作を重ねるごとにアクション意識が希薄になっているようだ。画面造型も三流演出家にはとても不可能な見応えを持つ一方、描き込みが過ぎて少々五月蠅くもある。アニメーションで達成した減法的作画・演出が顧みられていない。
ショメにとって「台詞の最少化」は脚本を書き起こす段階からどうしても譲れない点であるようで、過去作と較べれば主人公の周辺人物は真っ当に台詞を与えられているものの、当の主人公ギョーム・グイは一語の発話すら認められていない。その一方でショメ自身が作曲も手掛ける劇伴音楽はいっそう雄弁の度を増し、「失語的主人公」と「音楽」が最も有機的な連繋を図った作劇は、物語の水準において無声映画趣味の克服を目指している。
チャールズ・チャップリンやジョン・カーペンターなどの偉大な先人はもちろんいるが、音楽もよくこなす演出家は決して多くない。『ぼくを探しに』は必ずしも私を満足させなかったけれども、やはりショメの行く末は引き続き期待を込めて見届けていきたい。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。