[コメント] 大いなる旅路(1960/日)
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前方で雪崩が起きて「雪崩だあ」と三國が叫び、機関士の河野秋武が汽笛鳴らしてブレーキかけて、するとキャメラは機関車を斜め前方から捉え、どうなると思いきや転倒したので吃驚した。本物を転倒させているのだ。線路がスリップしやすいという前振りが効いている。
協力日本国有鉄道。撮影日数二年の由(予告編)。こだまの運転席に高倉健が座っているショットも驚愕もの。どうやって撮ったのだろう。一瞬だけ席をプロと替わったのだろうか。
「じっちゃんの死に目に会いてえ」と無蓋の貨物車に乗せて貰って(「俺が始末書書くから」と無理矢理乗せる花沢徳衛)、大雪を丸まって凌いでいる風見章子。昔の人は苦労したんだなあとシミジミする。ご縁で結婚。この奥さんの好演が良かった。星美智子も印象深い。女給で三國が好きで「あんた鈍感なのよ」と諦めて、後年駅で偶然会って「もうお会いすることはありませんねえ」と北海道へ旅立つ。終盤にフォローするかと思ったがそのままなのがドライだった。
三國への表彰で終わるのは、同じ国鉄映画で、表彰で始まる『遠い一本の道』を想起させる。東映任侠・ヤクザ映画の面々が多い。最後は山本麟一まで登場する。三國はヤクザ映画には出なかった。
山本は名古屋の埠頭で木材作業している。伊勢湾台風で名古屋港の貯木場の木材が大被害をもたらしたのは1959年で本作の撮影と被っているのではないのだろうか。山本と結婚して幸せ掴んだ娘の小宮光江、ひと安心の夫婦。ラストショットの遠く地平を舐める機関車の黒煙がソ連映画っぽい。
大正末年から戦後までの盛岡を中心とした物語。居間の真ん中に据えられた古墳型煙突付の石炭ストーブが珍しい。鉄道官舎共通の備え付け、石炭は売るほどあるからということなのだろう。三國のライバル役の加藤嘉の青年姿だけは無茶だった。
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