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[コメント] セザンヌ(1989/仏)

セザンヌは理論を愛した人で、ここで洪水のように引用されるフレーズは美学を規定し、映画評論にも多大な影響を与えたのだろう。本作はいささか強引な入門編で、ストローブ=ユイレの方法論も示してくれる。朗読するユイレの理性的な声もいい。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「散逸するものを一挙に掴む、永遠を掴む。そのとき私の手の震えは止まる。真実になる」「解釈など捨て去れ」「自然と芸術は並行する、融合する」「印画紙となった脳」「御者や子供のために描く、石油王のためには描かない」この格好良さは私も学生だったら鼻血をだして興奮しただろう。

色彩の重要性が強調される。「文字でなく色彩で掴め」「我が同胞の自然」「太陽を再構成することが使命だ」「僕らは虹色の混沌だ」「知は単純だ。描いているときは色彩固有の論理に従うだけ。あとは残り滓だ」

しかしセザンヌの写真とかルノワール『ボヴァリー夫人』の引用は不思議な気がする。モノクロだからである。一方、「光の偶然をどう描く?」の問いに『エンペドクレスの死』を自己引用するのは、何を考えて作品が撮られたかを示してとてもいい。「黒い線は許し難い。そんな自然などない」という主張もあった。美学的議論は枝分かれするのだろう。

色んなセザンヌ作が引用され、デッサン風の色を貼りつけただけ(淡い紫が強調される)のサント・ヴィクトワール山が箆棒に格好良かった。

(評価:★4)

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