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[コメント] 誰のせいでもない(2015/独=カナダ=仏=スウェーデン=ノルウェー)

もう、私はジェームズ・フランコに参ってしまった。ファーストシーン。オーケストラの音合わせの音。机とその上の小さなノート。そして目を瞑ったジェームズ・フランコ。そしてラストカットも、とびっきり上等のフランコのアップカットだ。これは何よりもジェームズ・フランコの「顔」の映画である。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 その顔の独創性は、いつも眠そう、ということころにある。事故の後も、しきりに眠いという。睡眠薬で自殺未遂をする。ラスト近く、クリストファーとの会話シーンでも、目を瞑る。

 そして、形式的には、間違いなくヒッチコックの末裔であると云える。それは端的には、シャブロルにも似た「Vertigo」(ドリーズーム)の活用だ。最もヒッチを思わせるのは、事故後、シャルロット・ゲンズブールの家が初めて映る場面だろう。ラストのフランコと庭の木を切り返して共に「Vertigo」であるという演出もかなり奇異なのだが、それは、これぞヴェンダース!という奇異さなのである。 中盤で、レイチェル・マクアダムスが消え、マリ=ジョゼ・クローズに取って代る、そしてマクアダムスが再登場し、その見せ場がある、というプロット構成もたまらない。

#本(ペーパーバック)を破いたゲンズブールが、その本をストーブに焚べながら、フォークナーは好き?と聞く。事故の際、彼女が夢中で読んでいたのは、フォークナーだったということだ。問われたフランコは「好きでも嫌いでもない」と応えるのだが、当のフランコは「響きと怒り」(2013・日本未公開)を監督・主演しているのである。ぜひ見てみたい。

(評価:★4)

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