[コメント] ルック・オブ・サイレンス(2014/デンマーク=インドネシア=ノルウェー=フィンランド=英)
人殺しが英雄の地位に座らせしめた前作のギャングスターどもはともかく、今回は「ちょっと人殺しもしちゃったけどアタシの自慢のお父さん」といった存在の指弾である。教育と洗脳ゆえに、彼らは恥じることなく酸鼻を極めた虐殺を説明し、正当性の存在と自主性のなさを語る。眼鏡屋が黙り込むのは隣人の無恥と、話の噛み合わない無邪気さゆえだ。
我が国にはこんな関係はない、と片づける者は在日問題の確執を知らぬ極楽トンボに過ぎない。ネット右翼だって、ただ正義の味方になりたい無力で善良な少年たちなのだろう。
だが、彼らは行動を免罪されることにはならないのだ。この映画ではまさに無力で善良な市民たちが彼らを精神的に救ってくれる政治家を選び、その結果、殺された人々こそが悪党であったとの教育が子供たちに施され、家族たちは自分たちこそが恥ずべき存在とされて肩身の狭い思いをする。無意識の悪は善にこそ近い、という理不尽な常識がはびこることになるのだ。
人を殺して英雄になった人間は史上たくさんいる。だが、だから彼らは免罪される、ということではない。罪ある者も石を投げなければいけないのだ。その石がブーメランのように自分に跳ね返ってくるとしても、それを恐れてはならないだろう。ブーメランが帰ってくるのが判っているなら、遅かれ早かれの違いでしかないのだから。
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