[コメント] ゴンドラ(1987/日)
高層ビルの窓拭きのゴンドラ。ゴンドラからの街の大俯瞰カットに、海の波をオーヴァーラップする。街頭シーン等で水中から撮ったようなエフェクトをかけた画面がある。あるいは、ミルクを飲んだコップを覗いて、コップの底越しに見える部屋。
その他、真俯瞰でカメラを回転させたり、走る少女を手持ちのカメラで追いかけたのであろう見事な移動撮影等、撮影と画面の技巧がちょっと吃驚するぐらい凝っている。少々古めかしさ(というか幼さというか)を感じる部分もあるが、映画を撮る喜びが伝わってきて、見ている私も嬉しくなる。
また、ゴンドラ、エレベータ、小舟、といった宙ぶらりんの乗り物のイメージ。ゴンドラの昇降装置、自動開閉するブラインドカーテン、レストランの配膳ロボットといった自動化を志向する非人間的な機械のイメージ。あるいは、白と赤の色の主題(初潮、ミルクの白、白い洗剤、白い文鳥、文鳥の羽の出血など)。これらの隠喩も、青臭さを感じもするが、しかし、画面の面白さに繋がっており興味を引っ張られた。
そしてもう一つ嬉しくなるのは、主人公の少女「かがり」の描き方が、前半と後半でかなり変わるのだが、その変貌ぶり、成長ぶりの対比がとても良い、というか、見ていて嬉しくなる趣向なのだ。さらに、木内みどりと佐々木すみ江に、共に風呂場のシーンがあり、いずれも「脱ぐ必然」等という事柄を一顧だにしなかっただろうと思えるぐらい、あっさりと胸をさらけ出すのにも感動する。
そしてそして、あゝこのカットで終わればいい、というカットで終わる。それは多くのプロットを「宙ぶらりん」にしながらなのだが、そこがいいのだ。
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