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[コメント] カルティキ/悪魔の人喰い生物(1959/伊=米)

核の脅威(カルティキは放射性生物という設定)には核をもって応じなければならないというタカ派の悲鳴に近い絶叫激語が聞こえてきそうな一斉火炎放射の眩さ(まるで核爆発のよう)に全身総毛立つ
袋のうさぎ

オープニングショットで全容が披露されるマヤ寺院のセットデザインが何気に変わっていて面白い。まるでマックス・エルンストの疑似森林が再来したような異様な突兀の連なり。『プロメテウス』のピラミッドを彷彿とさせる地下神殿の造形も見応えたっぷり。叢生する高薮や灌木に埋もれてしまっている岩屋の入口の崩れ加減が冥界下りの気分を弥が上にも盛り上げる。祭壇脇の岩の亀裂が透迤たる下降階段への抜け道であったり、しんとした溜池に過ぎなく見えたものが実は驚くほど水深のある湖中に通じていたり、思いもかけない広がりのある内部構造に心躍る。

特撮技術の限界をカット割りや照明の創意工夫で超克するーーーつまり、最小の資本で最大限の映画的効果を引き出そうとする経済性の意識が水際立つ。頼りない松明の瞬きがかえって得体の知れないものの気配や予感を強める洞窟の闇の深みはコントラストの強いモノクロの画面ならではのもの。リュートンホラーに通底する凝縮と暗示の美学が、画面に映し出されている以上のものに生命を吹き込もうとする。

(評価:★4)

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