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[コメント] こわれゆく女(1975/米)

原題は"A Woman Under the Influence"であり、訳すれば「酔った女」となる。
hk

**ネタバレ注意**
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ラストの唐突なハッピーエンドにはびっくりしたが、有り得ない事ではないのだから、その結末を素直に認めるより他はない。それでもやはり唐突過ぎた...? だがそんなことはどうでも良いことで、カサヴェテスはいつも通り「人間模様」というものをその巧みなカメラワークでフィルムに焼き付ける。ドキュメンタリータッチという軽いタッチの言葉はカサヴェテスには不向きであり、やはり彼の作品は「カサヴェテス」としか言いようがない。カサヴェテスはカサヴェテスであり、私達観客もカサヴェテスがカサヴェテスであることを期待してスクリーンを前に腰を下ろし(或いはテレビ画面の前に座り)、そしてその期待通りにカサヴェテスであるカサヴェテスを消費する。

 原題は"A Woman Under the Influence"であり、訳すれば「酔った女」となる。小さな子供を3人も抱え、家庭での雑務に追われる専業主婦がヒステリーに陥ることは珍しくない。まして気性の激しい彼女にとっては尚更のことである。気が触れたかのような彼女の振る舞いは、傍から見れば酔ったように映るのであろう。しかしその酔いは普段の生活の微細な権力関係(夫婦間、嫁姑間、親子間)が積み重なることによって生み出されたものであり、彼女だけにその責任があるわけではない。精神的に追い詰められた彼女を周りの皆がそれぞれの立場で救おうとする姿。そして、その根底にある彼女に対する愛情。その全てが余すことなくフィルムに捕らえられ、私達の目の前に現出する。

(評価:★5)

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