[コメント] 不思議の国のアリス(1933/米)
ファーストショットは雪降る中の屋敷の外観。続いて屋内のアリス−シャーロット・ヘンリーに寄っていくショット。やゝあって彼女は猫のダイナに話しかけながら、暖炉の上−マントルピースに登る。壁はガラス張り−鏡になっており、その向こうの別世界へ吸い込まれるように、浮遊するようにゆっくりジャンプする。これが導入部。ということで、本作のプロットは「鏡の国のアリス」とのミックスだ。なので、例えばお馴染みのチェシャ猫やマッドハッター(帽子屋)や偽ウミガメといったキャラクターと共に、ハンプティ・ダンプティとかトゥイードルダムとトゥイードルディーとか赤の女王と白の女王といった「鏡の国」のキャラクターも登場し、導入部がそうだったように終盤も「鏡の国」のプロットで締められる。
本作の脚本クレジットはジョセフ・L・マンキウィッツとウィリアム・キャメロン・メンジースの2人。当時メンジースは美術が本職なので、当然ながらプロダクションデザインも担当しており(ノン・クレジットだが)、このことでも、プリプロダクション段階からセットや装置をかなり考慮された企画だったのだろうと想像できる。ただし、この点でも、今現在見ると、イマイチ瞠目させられる造型がない、概ね貧弱な美術に感じられるという点は残念なところだ。
また、最初にオールスターと書いたので、キャストについて触れておくと、多くのスターがほとんど被り物や極端なメイクでその面影が残っていない、というのも本作の宜しくない部分だ。ハートの女王のメイ・ロブソンや赤の女王−エドナ・メイ・オリバー、マッド・ハッター役エドワード・エヴェレット・ホートン、芋虫のネッド・スパークスあたりだと顔が判別できるのだが、チェシャ猫のリチャード・アーレンとハンプティ・ダンプティ役のW・C・フィールズはもう少しメイクを軽くすればよいのにと思わされるし、トゥイードルディーのロスコー・カーンズとトゥイードルダムのジャック・オーキーはある程度顔が見えているのに、どっちも同じ顔にしか見えないメイクだ。
さらに、カエルのスターリング・ホロウェイ(後年のディズニー版ではチェシャ猫の声)、羊役メイ・マーシュ、ネズミ役のレイモンド・ハットン、三月ウサギのチャーリー・ラグルズ、そして偽ウミガメを演じるケーリー・グラントは、完全に着ぐるみであり(グラントの場合は頭部は牛)、声のみ(アフレコ)の出演と変わらない扱いだ(もしかしたら、彼らは顔出しを拒否したのか)。
そんな中で、白の騎士−ゲイリー・クーパーだけが特別というか一番面白く、彼もハゲヅラと付け髭で老けメイクをしており、ルックスはかなり普段と異なるが、その崩し方が絶妙な塩梅だし、アリスの髪が風で飛んで行かないか心配で頭を押さえるとか、すぐに落馬する(4回ぐらい落馬する)といった演出が笑わせてくれる。本作はまずはクーパーを目当てに見るのが良いと思う。
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