[コメント] チンパオ(1999/日=中国)
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1999年熊本市。企画された中国謝罪の旅に参加を拒む田村高廣。孫の岩崎ひろみ「爺ちゃん、そぎゃん悪かことばしたと?」という謎解きの映画。天草のやたら緊張感のないお祭り風景に田村が参入し、掘軍曹の墓参り。「天子様に逆らったから」。先祖と一緒に葬られず、外れの墓教える軍曹の妹の岩崎加根子。
疑問を抱えつつ孫と桂林へ。一行はいかにも桂林ぽい典雅な岩山の間を進む。戦火を逃れようと中国人が隠れたと紹介される、たくさんある岩穴。この戦中の薀蓄が優れている。岩穴のひとつに田村は入り、遺骨を探すが見つからず。
そこから回想される45年、敗走中の現地徴発(ちょうはつ)。仔牛取られて返せとついて来る子供の兄妹。兄がタイトルのチンパオ。翌日も押しかけてくる。この主張の頑固さ、兄妹の頑固な表情に、何か素晴らしいものが感じられるのが本作の美点だろう。日本人ならさっさと泣き寝入りするのではないか。
「もう少し太らせてから食べよう」と半世紀前の田村(大浦龍宇一)が板挟みの苦し紛れに云うと、意見はなぜか採用され、兄妹は兵舎に来て牛の世話。中国軍がやって来て敗走する部隊の中隊長が牛喰わせろと凄み、金山一彦の軍曹掘が仔牛守って中隊長に射殺される。
ここに納得性が薄いのが弱い。金山は伝染病が疑われたにも関わらず妹の横で出身地を回想してハモニカ吹いていたぐらいのことで、そこまでして仔牛を守る動機がよく判らなかった。しかしこれで分骨とは実家も酷い。軍が酷い報告をした、ということなのだろう。こういう軍の評価は匙加減でいかようにも描けるところではある。
最後に妹が彫りの深い表情の中年女性になって田村の前に登場する件はとてもいい。兄はその後日本軍に殺されているのは、この小品で盛り込むにはてんこ盛りに過ぎたと思うが、「日本人と口を聞くまいと思った」彼女が掘の墓を守っていたと伝えられるのは美しい。遺品の交換も定跡通りだが泣かせる。日中間、こんないい相互理解が進んだらどんなに良いだろう。牛の名前が田荘荘と同じチュアンチュアンだった。日中友好条約締結20周年記念企画作品。
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