[コメント] マホルカ・ムフ(1962/独)
ジャン・マリー・ストローブの映画監督デビュー作。ダニエル・ユイレは共同脚本及び監督補を担当している。タイトルは主人公の名前で、退役軍人(先の大戦の英雄)。
20分に満たない短編だが、主人公が出ずっぱりの作りで、延々と彼のモノローグを聞かされる。冒頭すぐに、銅像(軍服姿の主人公が台座に立っている)になる夢を挿入したりし、茶目っ気もある。ホテルの部屋やラウンジといった屋内シーンが多いが、中盤にはボン(当時の西ドイツの首都)の街を背景にした場面が続く部分があったり、再軍備に関する新聞記事がこれでもか、と挿入される部分もある。
こういったイデオロギー的な、アイロニカルな視点に興味を感じる人もいるだろうが、私には、様々な技巧を試したような演出の細部が何より興味深い。と云っても、試行とか実験と云った言葉は似つかわしくなく、もう既に、確信を持って選択されたカメラワークや構図であるように感じられる、出来上がった感があるのだ。特に、屋内での緩やかなドリーの寄り引き。屋外でのゆったりとしたパンニング。そして、主人公のために用意された制服が渡される際の、妻と政府の担当者(?)と主人公の3人で交わされる視線の交錯。これをゴク短尺の切り返し(ショット/リバースショット)で表現するカッティングには目が覚めるような効果がある。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。