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[コメント] 掌の小説(2009/日)

フェティッシュな様式美に応答するSO-SO文芸映画
junojuna

 全4話に象徴的な役どころで登場する凧をあげる老人の奥村公延遺作となった本作。監督でありプロデューサーでもある坪川拓史監督のクシシュトフ・キェシロフスキデカローグ』への思い入れが通じる仕掛りである。各挿話、原作の世界観を大事に据えながら、果敢にオリジナリティを抽出しようとする意欲が伺えるが、読める物語として映画を見ると荒い仕上がりとなって肩すかしを食うであろう。しかし、自身の芸術性に意識の高い作家たちの、フェティッシュな様式美への志向が伺える随所に映画的きらめきを湛えた面白さもある。読む映画ではなく感じる映画。これはまさに川端文学の詩精神と通ずる世界観であり、その意味では、この文豪の世界を映像化するという任を果たしてはいる。

(評価:★3)

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