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[コメント] 硫黄島(1959/日)

大坂志郎の傑作だなあと惚れ惚れ観ていると事態は重層化され、ついには佐野浅夫の傑作だと判明する驚き
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ああこれが戦後の初期設定だったのだとの感慨を覚えざるを得ない。大坂のような死に場所を求める覚悟のある者だけが戦場を告発できたのであり、佐野のような脛に傷持つ大多数の庶民は何もなかったように群衆に隠れて生活をやり直すしかなかった。物云わぬ大多数のなかで正しくあるには大坂のいつでも自動車に飛び込む悲壮な身振りが欠かせない、とまで本作は語っている。

何も変わっちゃいない。先日、カゴイケ理事長の息子の友人という人と話す機会があった。いい奴なんですよ、彼もあんなことなければ、墓場まで持っていく話ばっかりだったんでしょうけどね。社会人ってのは、墓場に持っていく話が多いですよね。

大坂・佐野の味な演技は特筆ものだろう。演出も良好、大坂が子供を助ける件の簡潔さなどいい描写だ。大坂にフラれてよよと泣き崩れる芦川いづみとはありえない図、ここの流麗なキャメラも素晴らしい。導入部がドタバタするのが惜しいが大したことではない。名演出家宇野重吉、だてに映画に関係していた訳じゃない。

(評価:★5)

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