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[コメント] ロスト・イン・パリ(2016/仏=ベルギー)

フィオナ・ゴードンドミニク・アベルによる身体操作の至芸はそのままに、前面にせり出しすぎたパントマイミストとしての矜持が映画を不自由に締めつけがちだった『アイスバーグ!』『ルンバ!』(前作は日本未公開)より台詞量も共演者への信頼も増して、幸福な仕方で「普通の劇映画」に近づいている。
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**ネタバレ注意**
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「共演者への信頼」についてもっと具体的に云うと、アベル&ゴードンが出演していない(もしくはメインではない)シーンにもよいシーンが多いということだ。筆頭は霊園ベンチにおけるエマニュエル・リヴァピエール・リシャールの膝下ダンスだろう(ダンスそのものは吹替かもしれないが)。脚部への接写を前提とする点で、舞台演芸よりも映画に適ったロマンティックなアイデアである。

レストランのシーンにおける店内BGMのギャグも面白い。スピーカが発する重低音の拍動に合わせて客がぴょこぴょこするギャグだが、スピーカの向きに従ってぴょこぴょこする客が変わる律義さも可笑しいし、子供の動きだけちょっと拙いのもいい。こういう可愛らしさはやっぱりジャック・タチを想い起させる。

終盤はまさに「普通の劇映画」のように少々ウェットに流れていくが、そうであっても決して下品に陥らないところは多くの映画製作者が見習うべきところだろう。しかしながら(だからこそ?)、自分でもどういう情緒の機序か定かでないが、テーマソングのKate & Anna McGarrigle“Swimming Song”とともにセーヌ川を大トラックバックするラストカットにはぐしゃぐしゃに泣かされてしまう。

(評価:★4)

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