[コメント] ダンケルク(2017/英=米=仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
第二次世界大戦を題材にした映画というのは非常にたくさんある。理由はいくつもあろう。とにかく派手で画面映えがするし、歴史の一部としても重要。観た人の記憶に残りやすいと言う事もあって、戦争映画の名作は数多く存在する。
そしてその戦争も様々だが、史実の戦争では第二次大戦が最も多い。最も派手だし、リアリティもあるためとても好まれる傾向がある。連合国側に断ったものが圧倒的に多いものの、枢軸側で描いたものも、あるいはドイツに占領されてしまったヨーロッパの国々の立場で描いたものとか、当然日本で作られたものは日本側に立って描かれる。
実に様々だが、史実では有名であるものの、映画ではあまり描かれなかった部分というのもある。
例えば本作のような撤退戦とか。
どうしても戦争は勇ましい雰囲気の方が画面映えするために、地味な撤退戦は好まれないが、これはこれでドラマとしては重要な要素をいくつも含んでいる。
一つには極限状態を作りやすいと言う事。戦争映画の醍醐味はまさにそういった極限状態の中での人間ドラマであるのだから、主人公達は追いつめられていた方が演出的には面白くなる。それにこれだけ絶望的な状況をどのように打破するのか?という興味も持たせやすくなる。
そしてもう一つは、逃げることがメインのため、必然的に狭い場所を伝わっていく関係上、かなり予算が抑えられるという点。
実はノーラン作品において、予算を抑えるというのはかなり切実な問題。ノーランは本物にこだわる監督で、できる限りCGを使わず、本物を使おうとする傾向がある。現に本作で用いられたスピットファイアは本物が用いられるほど。もしこんな具合で戦車戦闘機攻撃機の行き来する勝ち戦を描いたとすれば…
だからこれくらいが丁度良いのだ。
それになにより、こんなニッチな戦いを有名監督が作るということが一番大切。分かりやすい戦いではないから展開が見えずに楽しめる。
強いて言うなら、物語全般的に少々地味というところがあるが、それはそれで良し。
同じ時間を三つの物語をザッピングして行うという特殊なやり方で戦場を俯瞰する作り方は賛否分かれるだろうけど、元々戦争映画は群像劇で作るパターンが多いので、そんなに違和感は無い。華がなさ過ぎるという指摘も、なんせ本物のスピットファイアを飛ばしてそれが観られたというだけで充分だろう。
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