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[コメント] 母なれば女なれば(1952/日)

冒頭の裸で走る戦災孤児のショットなどドキュメント部分はさすがだし、家出して夜の野原を行く長兄が突然に警察予備隊の砲撃訓練に出くわす件は異様で印象に残るが、こういういい処が全然本筋に絡まない。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







身持ちの堅い未亡人の山田五十鈴。美人だから神田隆との仲を周囲から囃子たてられるのを我慢していたのだが、クライマックスに至って人前で神田に縋りつくに至る。夜半の神田との抱擁を学校で噂されて長兄がグレるのだが、この行為の何が悪いのだと宣誓する。母は女になった。という映画なのだろうか。

違和感があるのは、女になる母と更生を目指すべき長兄の組み合わせで、とてもぎこちない。そりゃ母ちゃんが担任の先生と抱き合っていたら頑是ない子供は話題にするわさ。そこに戦後的な性の解放をぶち込むのは過激で勇み足だし、作者にその自覚があるとも思えない。

三島雅夫の個人的な資質に糾弾が絞られるのは、戦前の傾向映画の悪癖の繰り返しだろう。彼がいい人だったらどうなるんだ、という処で物語に説得力がなくなってしまっている。神田が長兄の更生について見通しを特に持っていないらしいのも辛いところだし、偶然の出会いが激しすぎる。未亡人の切実さは後年とは比べものにならないものがあっただろうが伝わってこないメロドラマ。

(評価:★2)

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