[コメント] 浮気のすすめ 女の裏窓(1960/日)
男気溢れる伴淳が麗しい大船調艶笑譚。この後20年にわたり砕けまくるピンクコメディと比べてしまう。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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大泉滉に懇願されて買った西岡慶子の長屋、伴淳三郎は子供が帰ってきたのでいたたまれず、金を払い戻して帰って行く。こういうストイックなダンディズムがとても格好良く、路地裏の侘しい描写と併せてとても松竹大船調。伴淳の造形は理想的な父性を感じさせ、岩下志麻が寄り添うのも無理なく観せる。こういう男を見初める岩下は素敵だなあと、ふたりの関係は倍音を発している。これが本作の魅力だろう。
物語は色事に女が積極的という艶笑譚のパターンで、大物使いは愉しいが演出は気を遣い過ぎ。ここはよろしくない。高峰三枝子の自殺介抱の件など、彼女はベッドの影に消えてしまい、伴淳がひとり芝居をしているのは明らか。女性市長の清川玉枝にしてももうちょっと派手にやらかしたほうがいいだろうに。女優に鬼畜のように相対する後年のピンクコメディと比べるとこの点刺戟に欠けて物足りない。
ラスト、なにもそこまでという真面目さだが、刑務所に収監される伴淳からは、その後邦画界が被る災難を予見しているように見える。『黒い雪』事件は65年、『愛のコリーダ』裁判も日活ㇿパンポルノ裁判も70年代である。松竹は全然絡まなかったというのは歴史の皮肉か。そう云えば、当時松竹はすぐ終わってしまうヌーヴェルヴァーグの最中なのだった。
劇場で一番ウケていたのはブルー・フィルムの件。お客が笑えるように、状況を嫌味にならない程度に判りやすく小出しにする匙加減が巧いなあと思った。
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