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[コメント] 唐山大地震(2010/中国)

震災の描写の冷酷さなど
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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震災の描写の冷酷さに驚く。石柱の崩落、瓦礫の下の生存とリアルな救助。なんという生々しさか。園も熊切も、ここまではやらないだろう。しかし、ここの処は、日本人だ中国人だと類型化すべきでないだろう。ここまで踏み込まないといけないから撮ったという必然性があり、結果、これらの描写が本作をメロドラマから救っている。

もうひとつ、娘がシングルマザーになる決断において「私は被災者だから」と語るのは重い。個人的に、私は中絶反対に与しないが、彼女がそういうのはたいへんよく判った。一方、よく判らないのは母が孫を自宅から離さないことで、かつて弟をバスから返してもらった件と齟齬を来している。どう解していいのか不明、こういうのこそ文化の違いなのだろうか。姉弟生き別れの物語はディケンズを想起させ、堂々としており、登場人物が折り重なる話法は充実している。

毛沢東について。チャン・イーモウならこのような手放しの毛賛美、解放軍賛美は決してしないだろう。中国の世情も支持・不支持で別れると聞くが、作家も決して一枚岩ではないと知らされたのは、疎い私にとって収穫だった、少なくとも。贔屓目に捉えれば本邦の戦前の良心的な監督のような、取ってつけた感ありありとも云えそうだが、何にせよ気味のいいものではない。リアル・ポリテックスやね。

(評価:★4)

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