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[コメント] 真白の恋(2016/日)

二〇一七年、佐藤みゆきに主演女優賞を、岩井堂聖子に助演女優賞を捧げない日本の映画賞には不信任案を提出してよい。貧しい語彙しか有しない主人公の簡素な台詞設計が佐藤の繊細極まる所作・表情操作と響き合って実現することで、諸感情の強度はただならぬ殺傷力に達する。撮影の奮闘ぶりにも好感する。
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「写真」「自転車」というトラディショナルな映画的道具を使い倒す口実として、福地祐介を「写真家」に、佐藤みゆき家を「輪業」に設定する最率直な職業選択が、奇を衒わずして大胆、かつ誠実にして押し強い作品の人格を象徴している。

おそらくは製作予算の調達にかけて優位があるのだろう、町興しの企図を多分に含んだと思しき所謂「ご当地映画」が日本映画の一大傾向となって久しいが、管見の限りでは粗製濫造と云うほかない作がその多数を占めている。そのような状況にあってこの坂本欣弘による富山県射水市映画は、鈴木卓爾の静岡県浜松市映画『楽隊のうさぎ』、冨永昌敬の茨城県水戸市映画『ローリング』、森崎東の長崎県長崎市映画『ペコロスの母に会いに行く』、舩橋淳の茨城県日立市映画『桜並木の満開の下に』、蔦哲一朗の徳島県祖谷映画『祖谷物語 おくのひと』、御法川修の徳島県上勝町映画『人生、いろどり』、瀬木直貴の福岡県久留米市映画『ラーメン侍』などと並んで、これからのご当地映画が規範として仰ぐべき志と品質を備えている。

(評価:★4)

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