コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 刺青一代(1965/日)

競馬に例えるなら「最後の直線ヨーイドン!」の映画。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







要するに、最終コーナーを回るまで死んだフリをしているのだ。 高橋英樹演じる男も。“清順演出”も。

それまでだって、清順らしさがないわけではない。 後の『ツィゴイネルワイゼン』に似た雰囲気だって時折醸し出す。 だがそれは「鈴木清順の映画」だと思って観ているからであり、「鈴木清順上級者」のみ気付くものであろう。 まったくもって普通に「先の読める」ヤクザ映画の体をなしているのだ。

この「先の読める」展開が実はミソで、ヤクザ映画のそれは溜めに溜めたフラストレーション。最後はそれが爆発するカタルシス。エクスタシー。競馬に例えるなら、脚をためて最後の直線一気にかける展開。

ところが最終コーナーを回った辺りから様子が奇怪しくなってくる。“清順節”に鞭が入る。 「鈴木清順の映画」と思って観ていなかった人でもハッキリ分かる。 鈴木清順初心者は「これは違う。明らかに違う」と、ただならぬ気配にビビリ始める。 普通に「先の読める」はずの映画が「観たこともない」見せ場を迎える。 そして誰もがハッキリ悟るのだ。「ああ、これが清順映画なのだ」と。

これはそういう映画だ。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。