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[コメント] 西遊記2 妖怪の逆襲(2017/中国=香港)

料簡が狭いことを云うようだが、(そう云えば『モンキー・マジック 孫悟空誕生』の牛魔王アーロン・クォックが続篇『西遊記 孫悟空vs白骨夫人』で孫悟空を演じていたのにも呆れたけど)前作『西遊記 はじまりのはじまり』の配役を軒並み替えてしまうというのはどういう料簡なのか。舐めてんのかしら。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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前作におけるスー・チーウェン・ジャンのロマンスに覚えたときめきを弁済してほしいというのが率直な思いだ。物語を駆動するのが三蔵クリス・ウーのスー・チーに対する執着であり、そのスー・チーのみが前作から続投する(厳密には師匠チェン・シハンもそうか)という小癪な切り盛りが癪に障り、さらに当然ながらスー・チーは前作のカットを流用した回想シーンにしか現れないことが憤りに拍車をかけ、最後の最後になって新撮のスー・チーが登場するという仕掛けも見え透いていて忌々しい。が、これにはまんまと泣かされる。

それはさておき、コンピュータでお絵描きされたキャラクタのアクション・感情演出は、たとえば『西遊記 はじまりのはじまり』から大いに刺激を受けたと想像されるラマン・ホイの傑作『モンスター・ハント』にはむろん劣り、コアン・ホイの散々な珍作『封神伝奇 バトル・オブ・ゴッド』にすら胸を張って勝ったと云い切るのはむつかしい。製作・脚本のチャウ・シンチーがどの程度撮影/CG制作現場に関わったかは与り知らないが、少なくともアクション設計にはもっと口を出したほうがいい。

また、孫悟空役がホァン・ボーから男前のケニー・リンに替わって怒りの表情がむやみに恐ろしくなったことも、全篇のそこかしこから嗅ぎ取れる猟奇性の一翼を担っている。猟奇は猟奇でもシンチー的グロテスクとは微妙にベクトルを違えているのが据わり悪い。(今思えば、ギャグ的に間抜けな外見にもかかわらず手がつけられないほど強くて凶暴なホァン・ボーの孫悟空には、漫☆画太郎先生の『珍遊記〜太郎とゆかいな仲間たち〜』における山田太郎からの影響を見て取るべきだったのかもしれない)

一方で、前述のスー・チーを含め、女優はやっぱりいい。ジェリー・リンリン・ユン)が『人魚姫』より割を食った扱いなのは役の大きさというより性格造型的に致し方ないところだが、それでもよく健闘している。ヤオ・チェンの茶目っ気に溢れた軽い演じぶりはこの映画が結んだ最良の果実だろう。『ファイヤー・ストーム』や『ドラゴン・クロニクル 妖魔塔の伝説』のようにシリアスな役柄をしかつめらしく演じているときより、この九宮真人や『モンスター・ハント』の料理人のように大らかな喜劇の演出でこそ魅力的に輝く女優だ。

(評価:★3)

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