[コメント] 南京!南京!(2009/中国)
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たくさんある外国の南京事件もの。これらが本邦で公開されないのは異常事態で、ドイツでハリウッドのナチ批判映画が公開されないなんて話は聞いたことがない。本作が観れるのもNetflixが外資系だからじゃないのか。
本作で特徴的なのは日本軍の上官たちが全く描写されないこと。大抵の戦争映画では上官があれこれ命令するのを延々写して、何か恣意的な印象を残したりするのだが、こういう説明が一切排されている。ただ下級兵が自然発生的に事に及んだニュアンスが強調される。扉に向けて威嚇発砲したら中に人がいて殺してしまった、という最初の捕虜殺害の件が導入として効いている。
この下級兵たちの描写はリアルだ。「ふたりは若い」など歌ったりして(この歌が嫌いになってしまった)、休暇に無邪気に遊び呆ける件からは、今に続くヤンキー文化にとても近い印象がもたらされる。銃殺も強姦も面白半分のノリでやっちゃった、という具合なのだ。ああそんなもんなんだろうなあ、と思わされる。窓から子供を投げ落とすぐらい、頭に血の上ったヤンキーならやりそうなことだ。
「人はいつかは死ぬんだ」「死ぬより生きるほうか辛いときがある」という、いかにも日本人らしい諦念も生々しい。こちらでそう思っている分には勝手だが、それを捕虜に押しつけるとこんな惨劇になる。それは生き延びた小豆君の笑顔と対照的だった。思想信念は押しつけちゃいかんのだと思った。
撮影美術は素晴らしい。銃装填の繰り返しや、自転車で兵隊が伝令するショットなど、細かな処が見事に再現されている(兵隊同士がさん付けで呼び合うなど、事実に反する処も見受けられるが些細なミスだ。これはひょっとしたらヤンキー文化の描写なのかも知れない)。大八車で運ばれる裸婦たちのような凶行の描写は、余りのことにしばしば現実感が失われシュールリアリズムの域に達する。これはロッセリーニやアンゲロプロスらの伝統を引き継ぐものだ。
いやしかし、観るのが辛い映画だった。とんでもないことしてくれたものだ。日本はいつになったら真面にケリをつけられるのか。永遠に謝るのかとか(謝ればいい。当たり前だ)、殺された人数など些細なことでグチャグチャ云っているのは誠に恥ずかしい。こういうことは政府間で謝罪しても何にもならない。アメリカは戦後、移民排斥を自己批判して日本の移民代表を議会に呼んで謝罪した。日本もそうするべきなのである。そんなことぐらい、判らないのだろうか。
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