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[コメント] 悪太郎伝 悪い星の下でも(1965/日)

悪太郎』の続編かと思いきや、人物も時代背景やロケーションも全く別モノの映画でした。
ゑぎ

 『悪太郎』(以降、前作と書く)が大正時代の主に(ラストを除いて)兵庫県豊岡を舞台としていたのに対して、本作は(エピローグというかラストショットを除いて)昭和初期の河内(南大阪・八尾)を舞台とする。ただし、主人公と(一応の)ヒロインは山内賢和泉雅子のコンビで継続していて、その関係性は類似している。すわわち本作でも山内は中学生(旧制中学)、和泉は深窓の令嬢といった設定で、2人はほとんど初対面で恋に落ちる。

 プロット構成や人物設定における前作との相違点として大きいのは、本作には山内の父親−闘鶏などのバクチにウツツを抜かす多々良純が登場し、母親−初井言栄含めて重要な役割を担うという点がある。あるいは、山内が、三高(京都の第三高等学校)へ強い憧れを持っていることなどもあげられると思う。これを、三高の寮歌「逍遥の歌」(紅もゆる丘の花)の劇伴で何度も象徴的に表現する。しかし、これら以上に相違点として決定的なのは、和泉と共にダブル・ヒロインというか、和泉よりも山内と絡んで清順らしい逸脱した画面に貢献する野川由美子の存在だろう。

 事実、冒頭から清順の割には普通の演出が続いて、らしさの発現が希薄だと感じながら見ていたが、山内と和泉の出会いの場面や続く2人の逢瀬以上に、野川が鈴子−和泉の名前をかたって山内を八尾駅に呼び出し、そのまゝ宝塚温泉にしけこむシーケンスになって、ようやく清順らしい破天荒なカッティングが本領を発揮するのだ。この後も、「時鳥」(ほととぎす)という旅館で密会する山内と野川。山内をガラス窓(パターンガラス)の後ろや衝立に隠したりする見せない演出もいい。

 終盤は和泉にも面白いシーンがある。彼女が墓地でお祖母ちゃんの墓を抱きかかるようにしているショットで急激なズームイン。こゝから続く、竹林の中での山内と和泉2人のからませ方も、清順らしい、まるで瞬間移動したかのようなカッティングを連打する。あるいは、和泉の日傘の見せ方。数本の竹の隙間から和泉を撮ったショットで、ズームアウトすると彼女が消えている、という演出にも驚かされる。

#備忘でその他の配役などを記述します。

・和泉の父親は雪丘恵介。兄は平田重四郎で山内の同級生。婆やに紅沢葉子

・野川の家は質屋。父親は中村是好

・山内の家が世話になる和尚で三島雅夫。多々良の博打好きの友人で谷村昌彦

・山内が働く「中川牛乳」の社長は藤山竜一。近所の駐在さんに久松洪介

・山内が牛乳を売り込む農家のオジサンに青木富夫

・山内の同級生には杉山元がおり、上級生で野呂圭介笠井一彦。笠井は後に、『男はつらいよ』シリーズのタコ社長の部下(工員)役でレギュラーになる人。

・旅館「時鳥」の女将は三崎千恵子。とら屋のおばちゃん。

・布施の金神組のヤクザで長弘柳瀬志郎

・山内と和泉は、偶然同じ本を読んでいた。本作は「アンナ・カレーニナ」。前作ではストリンドベルイの「赤い部屋」。

(評価:★3)

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