[コメント] 十誡(1923/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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そもそも「出エジプト記」はモーゼの出生の秘密から始まり(本当はここが面白い)、そしてエジプトに来て9つの奇蹟を行う(これも面白い)ことが順次語られる。それらをすべてカットしたのは、どうせ聖書の荒唐無稽な話だろうと観客に言われるので、十戒に関係のない話は極力省いたからだ。ただ、客寄せの意味で、誰もが好きなシーン―分かり易いアクション活劇シーン、つまり海割れの大スペクタクルを入れてみた、という事だ。ところが、これが見事なシーンに出来上がり、大好評。後世に残ることになった[※1]。そうしてセシル・B・デミル監督は大いに落胆しただろうが、本命の第2部を取り上げる者は誰もいなくなってしまったのだ。
※1 主人公のセオドア・ロバーツが貧弱過ぎると思ったが、調べるとモーゼはこの時80歳だった(同記7章7節)。今のではなく、昔の80歳ならこんなモノかもしれない。
しかしこの本命の第2部は、ストーリーラインが端正で、展開も無理がなく分かり易く、いい物語に仕上がっている。 劇中出て来る不法建築は、姉歯事件(2005年)を思い出す。あの時私も建築業界に居たが、ある人に言わせると「姉歯さんはひどすぎたが、それ程でない不法建築はごまんとある」とのことだった。そういう世の中になっている(現在進行形)ということだ。
さて「十戒」というと、何が入っていたっけ?とあやふやな記憶しかないので、改めて確認してみた。
十戒。以下に要約。(原書に番号は付いていない)
1、私は唯一の神である
2、私の像を造ってはならない
3、神の名をみだりに唱えてはならない
4、安息日を聖とし、仕事をしてはならない
5、父と母を敬え
6、人を殺してはならない
7、姦淫してはならない
8、盗みはいけない
9、人について偽証をしない
10、人のモノを欲しがるな
1〜4は神に関わること。5〜10は人間としての在り方で、当たり前の事を言っている・・・と思ったが、本当にそうだろうか?
例えば、日本の現代(今は2020年)では、どの項目も重要視されていないのではないか。 人殺しはいつもある。[もっとも件数自体は減少と聞く]。
不倫もいつも週刊誌を賑わせている。
嘘は、国会においてさえ、いつも野党が叫んでいる「嘘をつくなー」。
強欲に財産を増やす―これが世の中だよ、大人になれ―と公言する人も多い。
1923年の現代ではなく、2020年の現代でも十戒―この映画は通用するだろう。と言うより、いつの時代も人間は、倫理観なんて持ち合わせていない、という事だろう。だから、逆に必要なのだろう。
今回聖書を読み返して、1つ気付いたこと。それは「父と母を敬え」の後にはこう記されているのだ。「なぜなら、あなたが長く生きる為である」。 神は、否、聖書を著した人は、人間をよく知っていた、とつくづく思う。
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