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[コメント] かも(1965/日)

緑魔子が銀座の舗道を歩く。これが冒頭とラストで呼応するように使われる。本作も銀座映画だ。主人公は梅宮辰夫と緑魔子。梅宮はクラブ「ブルースター」の店員(キャプテン)だが、裏ではホステスのスカウトから引き抜き、他店への斡旋を行い金を儲けている。
ゑぎ

 スカウトの方法は、素人娘をレイプして手なずけ、自分の女にしてからホステスにする、という手口で、本作中では、ヒロインの緑魔子と、あと大原麗子が餌食になる。当時の梅宮のルックスと醸し出すムード、あるいは、娘側の状況もあり、充分納得させられてしまうのだ。

 仲沢半次郎の躍動感のある撮影で、ヒリヒリした空気が上手く醸成されている場面も多いと思うが、ズーミングの頻出には辟易した。人物にズームで寄って、ズームで引く。なんとかの一つ覚えのようだ。これは撮影者に任せられていたのだろうか、監督の指示なのか(いずれにしても作品の質的責任は監督にある)。例えば、梅宮の部屋で、緑魔子がレイプされるシーンに続いて、同居している原知佐子(人気トルコ嬢という設定)が帰宅し、修羅場になる場面。部屋から出て通りを歩く梅宮を、窓から見る原へ、ズーミングするのだ。私には、どうしてこんな過剰な心理的演出をするのか理解できない。

 もうひとつ、たいへん気になったのが、銀座の通りに面した喫茶店内での会話シーンだ。これが何度もあるのだが、通りを歩く人々が、こちら側(カメラ及び俳優側)をちらちら見ながら通り過ぎるのだ。もうちょっと何とかできなかったのだろうか。私は気が散って仕方がなかった。

 さて、あといくつか、書き留めておきたいシーンがある。まずは、梅宮と別れた緑魔子が、築地あたりの公園で出会う、四ツ木から買い出しに来た魚屋二人とのシーンだ。これが、石橋蓮司潮健児。若き石橋は、吃音者を演じている。魚を積んだトラックに乗せられた緑魔子は、向島の工場の横を通る際、前に働いていた場所だと云う。その直後、土手で降ろされた彼女は、草原の中で二人に輪姦されるのだ。背の高い雑草が揺れるカットで象徴させるアイデアは、イマイチかとも思うが、撮影は快調だ。

 次に、大原麗子にご執心の客(呉服屋の番頭、と科白であったと思う)をやっているのが蜷川幸雄で、結果的に大原にもてあそばれ、身を滅ぼしてしまう情けない男を真面目に演じている(結果的、というのは、大原は気が咎めていたが、梅宮のそそのかしに従っていたのだ)。

 あと、ラスト近く、梅宮が緑魔子から呼び出されたのは、泰明小学校の屋上という設定だが、これが、全然、小学校の屋上に見えない、どこかビルの屋上である、という点を付記しておく。ま、それはどうでもいいいですが、このシーンもなんか変なシーンなのだ。

#備忘でその他配役等を記述します。

・ブルースターのマネージャーは藤村有弘。社長は沢彰謙。社長は終盤で登場。ホステスの寮は隅田川べりだと思う。月島あたり?管理人は浦辺粂子

・喫茶店のウエイトレスだった大原は料亭で押し倒されるが、このシーンの女中は、佐々木梨里だ。喫茶店には、日東ティーコーナーという看板が見えたと思う。

・ホステスで他に目立つのは、北原しげみ玉川良一から200万円せしめる。「天ぷら屋の癖に金は滑らない」という科白が2回ほどある。金払いが悪い意。梅宮と関係を続けている年増のママで国景子。彼女の店は北原にわたる。北原が開業した店のバーテンダーは八名信夫

・産科の医者役で織本順吉

(評価:★3)

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